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    SAIL DESIGN

    ノースセールは1977年からコンピューターを使用してセールをデザインするソフトウェアの開発を進めていました。1979年にはCFD(計算流体力学)によりセールに生じる力を計算でき、FEA(有限要素解析)によってセールシェープを予測するデザインソフトウェアを開発しました。これらのソフトウェアは現在ノースセールのデザイナー達によって使用されているセールメーキング業界で最も進化したデザイン/シミュレーションソフトウェアの礎となっています。ノースセールの全てのデザイナーが共通のソフトウェアを駆使し、アメリカズカップやVOLVOオーシャンレースのセールデザインにも使用しています。 
     
    これらのデザイン統合ソフトウェアを使用することで、セールやリグの解析はかつてないほどの、自由度を得、計算速度も飛躍的に向上しています。それぞれの特化したソフトウェアが、データや計算結果をリンクすることで、デザイナーはセールを作る前、あるいはボートを作る前に、ヴァーチャルにセーリングでき、シミュレーションによりセールの性能評価を可能にしています


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    1) Desman

    ノースセールでは”Desman”と呼ばれるノースセールオリジナルのソフトウェアを使用して、完全な3次元のリグモデルを作成します。DesManを使って、デザイナーはマスト、ブームの正確な寸法や位置、デッキからマストトップまで、セールトリムに関連するフィッティングの位置などを入力します。モデルにはリグやランニングリギンの物理的な特性から、慣性、素材の伸びにくさといった組成値も含まれています。
    これらのモデルはノースセールのソフトウェアFLOWにエクスポートされます。


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    2) Spine & Spiral

    DesManで使用されるセールモデルのモールドセールは"Spiral"あるいは"Spine"と呼ばれる3Dセールデザインソフトウェアでデザインされています。
    "Spiral"では、風圧、荷重を考慮せずに、セールを3次元のシェープのいわゆる”モールド”でデザインします。モールドは水平方向にも垂直方向にも自由に曲面を調整できます。次にデザイナーはセールの構造材料をインプットします。パネルセールであれば、セール生地の弾性率といった係数を、3DLセールでは、ヤーンレイアウトと弾性率などをインプットします。ヤーンの方向と量はセールシェープに大きな影響を与えます。
    一般的に、設計風速で、材料(ヤーン)を最少限で、理想のシェープを展開できるセールを造ることが目標です。最終的には風によって生じる力やセールトリムのセッティングでフライングシェープが決まります。
    デザイナーは設計風速で理想のフライングシェープを再現できるよう、モールドを調整してデザインします
     


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    3) Flow

    DesManで設定されたリグモデルは次の2つのステップ、FlowとMEMBRAINで使用されます。このデザイン過程では2つのプログラムがあたかも1つのシステムとして解析を行います。事実、ノースセールでは”FLOW/MEMBRAIN解析”と称しています。
    FLOWはDESMANで設定したセールシェープとリグのセッティングに、あらかじめ設定した条件の風をセールに流すことができます。TWS(真風速)、TWA(真風角)、リ-ウェイ、ボートスピード、ヒール角の設定も計算条件に取り入れます。
    FLOWではセールを流れる風により生じるセール表面のプレッシャーマップが作成されます。プレッシャーはセールのサイズやシェープ、あるいはセールの素材構成、風の条件によって変化します。このプレッシャーマップファイルは有限要素解析のためMEMBRAINソフトに直接リンクされます。 FLOWではVPP(速度予想プログラム)のセール関係のパフォーマンスにとって重要となるセールによって生じる力やモーメントも計算されます。

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    4) Membrain

    MEMBRAINはDESMANよりセールシェープを、FLOWからプレッシャーマップを取り入れ、セールとリグに荷重条件を与えると、セールとリグが一つの構造体として連動し、変形をします。構造が変化するとセールのシェープも変形し、MEMBRAINは FLOWにリンクバックし、変形したセールシェープに生じる新しいプレッシャーマップを再計算しなおします。このプロセスはリグ/セールの変形とプレッシャーが収斂するまで繰り返されます。この計算過程では、デザイナーは多くのオプションを試すことができます。シートやバックステーを締めたり、緩めたり、トラベラーやジブカーの位置を変えたりしてトリムすることによりフライングシェープを調整することができます。このソフトウェアでは、ダイアゴナルシュラウドの調整といったファインチューンによる変化にもセールシェープは影響されるほど、細かいセッティングにまで敏感です。 

    このソフトはバーチャルセーリングとも言え、結果はセールとマストの変形の具合が詳細なグラフィックスで表現されます。マストとセールが一体となって解析されるので、セールをマストに合わせることも、マストの特性をセールに合わせることも容易に出来ます。マスト/セールに生じるすべての荷重(スタンディングリギンやシート、ハリヤードテンションなど)、セールの水平断面と垂直断面(フライングシェープ)、ヤーンレイアウトによる張力と伸び等の詳細な結果が得られます。張力はヤーンに生じる荷重、伸びはヤーンがどれだけ伸びたかを表します。

    マスト/セールのコンビネーションより生じる荷重はハルやアペンデージ、はたまたボート全体のバランスにどのような影響を及ぼすかといった解析に利用されます。ヨットデザイナーにとってもセーラーにとっても興味深いソフトウェアです。
    DESMAN,SPIRAL,FLOWとMEMBRAINを使用することで、ノースセールのデザイナーはより広い風域で使用できるより軽いセールをデザインできます。 ノースセールのデザイナーは理想のセールシェープを得られるように最低限のヤーンの量で軽く造れれば、ボートにとってもアドバンテージがあると考えています。

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    5) VPP and HullVPP

    ノースではアメリカズカップ出場艇のセールを開発する際、各シンジケートからハイドロ計算データ(水槽実験データや数値流体力学計算データ)をもとに、セールのサイズやセールシェープの最適化を行ってきました。アメリカズカップで開発されたこの技術を他のボートに適用できるよう、高価な水槽実験やCFDのモデリングをすることなく計算のできるHull VPPを開発しました。 HullVPPはボートおよび、キール、ラダーの三次元表面形状データを用い、帆走中の船体に生じる流体力を計算します。次にNorthVPPは船体に生じる流体力と、Flow,Membrain,Virtual Wind Tunnelから計算されたセールに生じる流体力を統合します。その結果、特定のヨットの想定された風と波のコンディションに合わせたセールがデザインできます。